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中小企業におけるサステナビリティ経営の留意点 人的資本経営編 第9回

1.前回の振り返り

前回(第8回)は、人材戦略の構築ポイントについて解説しました。人材ポートフォリオごとのAs-is(現状)とTo-be(ありたい姿)を鮮明に描く重要性を解説しました。今回は、人事施策構築に当たっての基本ポイントについて解説します。

2.人事施策の策定における基本的考え方の整理

(1)キャリアマップ(人材開発ルート)を描く

人材ポートフォリオに基づく人事施策の基本構造は、「ジョブ型」の施策がなじみ易いと言えます。「経営人材」「マネジャー人材」「プロフェッショナル人材」「エキスパート人材」、それぞれの特性(貢献領域、求められる知識・経験、責任の程度等)に合わせた人事施策を構築する合理性が高いことから「ジョブ型」(人材ポートフォリオ別人事施策)が分かりやすいと考えられます。

しかしながら、中小企業において人材ポートフォリオ別の人事施策(ジョブ型人事施策)をいきなり導入することは難しいと考えられます。メンバーシップ型で採用し、その後のキャリア開発により「マネージャー人材」 ⇒ 「経営人材」へのルートを経るのか、「エキスパート人材」 ⇒ 「プロフェッショナル人材」へのルートを経るのかなどのキャリア開発ルートに従った人事施策が求められると言えます。自社の必要人材を明確にした上で新卒採用者のキャリアマップ(人材開発ルート)や中途採用者(キャリア採用者)の活躍領域を整理することから始めることがお勧めです。

(2)等級制度構築のポイント

ジョブ型で「人材ポートフォリオ(経営人材・マネージャー人材・プロフェッショナル人材・エキスパート人材)」別に人事制度を構築するのであれば、人材ポートフォリオごとに等級制度を設計するのが合理的と言えます。メンバーシップ型で将来の「経営人材」を育成するキャリアマップを描くのであれば、キャリアステージごとに等級設計することが考えられます。自社のキャリアマップ(人材開発)に対応した等級設計を行うことがポイントです。一つのイメージは下記のとおりです。

(3)賃金制度の基本的考え方

賃金制度を策定する際の基本的考え方はいくつかあります。年齢・性別・学歴等の属人的要素に関係ないジョブ型による賃金設計もその一つです。賃金制度設計における代表的な基本的考え方として、①生活保障の原則 ②労働対価の原則があります。会社員は毎月の賃金で生活します。賃金は、その生活を維持できるものであり(生活保障の原則)、業務パフォーマンスに応じて支払われるもの(労働対価の原則)であるという考え方です。①生活保障の原則に則って考えれば、人材ポートフォリオ(経営人材・マネージャー人材・プロフェッショナル人材・エキスパート人材)の違いはあっても賃金で生活するという面では違いが少ないと考えられます。一方で、②労働対価の原則に則って考えれば、人材ポートフォリオ別・等級別に業務パフォーマンス(会社貢献度)は異なり、大きな差が生じると言えます。

この基本構造をどのように賃金制度に反映するかの基本的考え方を整理することが重要になります。

なお、賃金水準を確認するには以下の統計調査が参考になります。

◇賃金構造基本統計調査(厚生労働省)

◇民間給与実態統計調査(国税庁)

◇職種別民間給与実態調査(人事院)

◇地方公務員給与の実態調査(総務省)

(4)評価制度構築のポイント

評価制度を設計する際には、上記(2)で設計した人材群別・等級別の「仕事・役割」「求められる知識・技術・技能」を整理することが重要です。ジョブ型における「ジョブディスクリプション」のような詳細なものまで必要としませんが、人材群別・等級別にどんなパフォーマンスが期待され、そのパフォーマンスを発揮するために必要な業務知識・技術・技能などを整理します。整理項目としては、「業績・成果」「知識・技術・技能」「取組み姿勢」などが一般的です。「知識・技術・技能」を整理する際には、以下のカッツ理論を活用するのもお勧めです。

次回は、人事施策の実践(運用)ポイントについて解説します。

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