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中小企業におけるサステナビリティ経営の留意点 人的資本経営編 第6回

1.前回の振り返り

前回(第5回)は、「コーポレートガバナンス・コード」(2021年東証改定)、「人的資本可視化指針」(2022年内閣官房)、「有価証券報告書における人的資本経営における開示」(2023年内閣府令)により人的資本経営への取組み強化が主に東証上場企業に求められていることについて解説しました。しかしながら、人的資本経営の重要性は上場企業などの大手企業に限られたものではありません。

今回は、中小企業における人的資本経営の重要性について解説します。

2.中小企業における人的資本経営の重要ポイント

(1)外部環境変化

産業構造の変化により企業価値の約9割は無形固定資産から生み出されていると言われています。無形固定資産の源泉は「人」です。昔から「企業は人なり」「人材は宝」と言われてきておりますが、今改めて人への投資の重要性が高まっています。

日本は、少子高齢化の一番手であり生産年齢人口(15~64歳)は年々減少し2030年には2020年に比べ約531万人減り、6875万人になると予測されています(国立社会保障人口問題研究所)。人手不足は全産業に及んでいます。更に、初任給の大幅上昇、4%を超える賃上げ、最低賃金の継続的上昇(2024年10月改定は5%UPが見込まれる)など人材を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。

このような経営環境の変化の中で、企業成長に必要な人材の採用⇒育成⇒定着⇒活性化を計画的かつ着実に実行することが重要となります。上場企業等の大手企業は、前回(第5回)で解説しましたとおり法規制等により人的資本経営に積極的に取り組まざるを得ません。大手企業が積極的に取組む中で、中小企業が何もしなければ人材市場において取り残されることになります。

(2)中小企業の人的資本経営の重要ポイント

①人間観の確立

経営層(特にトップ)が本気で「企業は人なり」「人材は宝」という認識を持つことが重要といえます。松下電器産業を興した松下幸之助氏は、「物をつくる前に人をつくる」と創業期より人への投資を訴えております。形ばかりの仕組みをつくったり、耳障りの良いことを言っても社員は見抜きます。社員に対する人間観を経営層がしっかり持つことが人的資本経営の基盤となります。

②動的人材ポートフォリオ

中小企業における人的資本経営の仕組みづくりで重要なのは、動的人材ポートフォリオを明確にした上で採用⇒育成⇒定着⇒活性化の仕組みづくり行うことです。

「人材版伊藤レポート2.0」における「5つの共通要素」(第4回解説)のトップに掲げられているのが人的ポートフォリオです。動的人材ポートフォリオの組み方はいくつかあると考えられますが、筆者は以下のように捉えています。

中長期経営目標を達成するために必要となる人材像(質・量)を鮮明に描くことが重要となります。その上で必要人材を確保するための内部育成計画や外部調達計画を具体的に策定し、採用⇒育成⇒定着⇒活性化を確保するための具体的な仕組みづくりを着実に行うことが重要となります。

次回から中小企業における人的資本経営の実践ステップについて解説します。

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