自民党と公明党は12月14日、「令和6年度税制改正大綱」を決定しました。個人所得課税では、令和6年分の所得税等に適用する「定額減税」を盛り込まれ、法人課税は、賃上げ促進税制を大幅に見直し、中小企業には5年間の繰越控除制度が設けられています。また、半導体等の生産に係る税額控除制度の「戦略分野国内生産促進税制」が新たに創設されています。今月は主要な改正に係る要約をご紹介いたします。
※法人税
●賃上げ促進税税制(中小企業向け)
物価高に負けない構造的・持続的な賃上げの動きをより多くの国民に広げ、効果を深めるため、賃上げ促進税制を強化する。 中小企業においては、未だその6割が欠損法人となっており、税制措置のインセンティブが効かない構造となってるため、従来の賃上げ要件・控除率を維持しつつ新たに繰越控除制度が創設された。
① 控除限度超過額は5年間の繰越しができることとする。繰越税額控除制度は、繰越控除をする事業年度において雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超える場合に限り適用できることとする。→持続的な賃上げを実現する観点から、全雇用者の給与等支給額が対前年度から増加していることを要件としている。 |
② 教育訓練費に係る税額控除率の上乗せ措置について、教育訓練費の額の比較教育訓練費の額に対する割合が5%以上であり、かつ、教育訓練費の額が雇用者給与等支給額の0.05%以上である場合に税額控除率に10%を加算する措置とする。 |
③ 当期がプラチナくるみん認定若しくはプラチナえるぼし認定を受けている事業年度又はくるみん認定もしくはえるぼし認定(2段階目以上)を受けた事業年度である場合に税額控除率に5%を加算する措置を加える。 |
●「交際費の損金不算入制度」について、下記の見直しを行い、適用期限を3年間延長する。
① 損金不算入となる交際費等の範囲から除外される一定の飲食費に係る金額基準を1人当たり1万円以下(現行:5,000円以下)に引き上げる。 |
② 接待交際費に係る損金算入の特例及び中小法人に係る損金算入の特例の適用期限を3年延長する。 |
※資産税
●特例承継計画の提出期限を2年間延長
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度及び、個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶制度について、コロナの影響が長期化したことを踏まえ、特例承継計画の提出期限を令和8年3月まで2年間延長する。
改正前 | 改正後 | |
特例承継計画・個人事業承継計画の提出期限 | 令和6年3月31日 | 令和8年3月31日 |
法人版事業承継税制の特例措置の適用期限 | 令和9年12月31日 | 改正なし |
個人版事業承継税制の適用期限 | 令和10年12月31日 | 改正なし |
- この特例措置は、日本経済の基盤である中小企業の円滑な世代交代を通じた生産性向上が待ったなしの課題であるために事業承継を集中的に進める観点の下、贈与・相続税の税負担が生じない制度とするなど、極めて異例の時限措置としている
- 事業承継を検討している中小企業経営者及び個人事業者の方々には、適用期限が到来することを見据え、早期に事業承継に取り組むこと及び政府・関係団体には、目標達成のため一層の支援体制の構築を図ることを強く期待する。(令和6年度税制大綱)
●「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」について、非課税限度額の上乗せ措置の適用対象となるエネルギーの使用の合理化に著しく資する住宅用家屋の要件を見直しの上、適用期限を3年延長する。
●「特定の贈与者から住宅取得等式の贈与を受けた場合の相続時精算課税制度の特例」の適用期限を3年延長する。
※個人所得税
「定額による所得税額の特別控除」を実施する。居住者の所得税額から下記の特別控除の額を控除する、ただし、その者の令和6年分の所得税にかかる合計所得金額が1,805円以下である場合に限る。
- 所得税 ⑴、⑵の合計額とする。(その者の所得税額を限度とする。)
本人 3万円 ⑵ 同一生計配偶者又は扶養親族(居住者に該当する者に限る) 1人につき3万円 - 住民税 ⑴、⑵の合計額とする。(その者の所得割の額を限度とする)
本人 1万円 ⑵ 同一生計配偶者又は扶養親族(国外居住者の除く) 1人につき1万円
人事・労務、助成金等のご案内
令和6年度税制改正大綱に「賃上げ促進税制」が強化されることにより、一層の賃上げを促すほか、子育てと仕事の両立や女性活躍推進の取組についても税制面から支援されています。
「くるみん認定」「エルぼし認定」のご説明をさせていただきます。
※「くるみん認定」とは
「次世代育成支援対策推進法」に基づき、一定の基準を満たした企業を認定する制度。女性の仕事と子育ての両立を支援・サポートしている企業に対して、厚生労働省が認定し取得できるもの。トライくるみん認定、くるみん認定、プラチナくるみん認定がある。また各くるみんの一つの類型として、不妊治療と仕事を両立しやす職場環境整備に取り組む企業の認定制度「プラス」が創設されています。
※くるみん認定取得までの流れ
ステップ1 自社の現状や従業員のニーズを把握しましょう。 |
〇行動計画が企業の実情に即したものになるように、仕事と子育ての両立にあたって障害となっている事項や、従業員のニーズを把握しましょう |
ステップ2 ステップ1を踏まえて、行動計画を策定しましょう。 |
〇計画期間を決める。〇目標を決める 〇目標を達成するための対策とその実施時期を定める。 |
ステップ3 行動計画を公表し、従業員への周知を図りましょう。 |
〇一般への公表 〇従業員への周知 |
ステップ4 行動計画を策定した旨を都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ届け出ましょう。 |
〇行動計画を策定したら、策定の日から概ね3カ月以内に届出をする |
ステップ5 行動計画を実施しましょう。 |
〇行動計画に掲げた対策を実施し、目標を達成するために取り組みましょう。 |
行動計画期間の終了後、都道府県労働基準局雇用環境・均等部(室)へ、くるみん認定の申請 |
「子育てサポート企業」として認定 くるみんマークの付与! |
くるみん認定後の行動計画の期間終了後都道府県労働局雇用環境・均等部(室)へ、プラチナくるみん認定の申請 |
優良な「子育てサポート企業」として認定 プラチナくるみんマークの付与! |
認定基準の詳細については以下のURLをご覧ください。
一般事業主行動計画の策定・届出等について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
※「えるぼし認定」とは
「女性活躍推進法」に基づき、女性の活躍推進に関する状況や取組等が優良な企業を認定する制度。認定のレベルは1つ星~3つ星の3段階であり、星の数が増えるほど、女性活躍推進が進んでいることを表す。特に女性活躍においてすぐれた結果を納めている企業は「プラチナえるぼし認定」を受けることができます。
「くるみん認定」「えるぼし」を受けるメリット
- 認定を受けた企業名は厚生労働省のホームページに掲載される
- 自社の製品は広告、採用活動において認知マークを使用することが可能
- 企業ブランドの向上、イメージの向上による優秀な人材の確保等
ご不明点等ございましたらお問合せください。