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経営財務かわら版 第125号 令和5年12月号

 電子取引データに係る宥恕措置(電子取引データの保存に代えて出力した書面により保存すること)は、R5年12月に廃止され、新たに猶予措置と検索要件不要措置が設けられました。R6年1月に向けて、「原則通りすべての検索要件を満たして電子取引データを保存(A)」、「検索要件を満たす代わりにダウンロードデータの提示・提出ができるように準備して電子取引データを保存(B)」するのか、または「電子取引データを保存しつつ、併せて出力書面を整理保存(C)、(D)」するかなど保存方法の選択肢が増えています。いずれの場合も電子保存が前提であり、「電子保存」の緩和でないことにご留意ください。

★検索要件が不要となる対象者の見直し

税務調査などの際、電子取引データの「ダウンロードの求め(データのコピーの提供)」に応じられるようにしている場合に検索機能の“全てを不要”とする措置に関して次のように対象者が見直された。

  • 対象者の範囲が基準期間の売上高が1,000万円以下から5,000万円以下に拡大
  • 電子取引データを印刷した書面を、取引年月日その他の日付、取引先ごとに整理された状態で提示・提出できるようにしている場合

※高速道路のETCクレジットカードの利用に係るインボイス対応について、弾力的な措置が国税庁から公表されています。

Q

ETC料金のインボイス対応の概要を教えてください。

A

クレジット会社が発行する「ETCクレジットカード」では、東日本高速道路(株)等が運営するウェブサイト「ETC利用照会サービス」から、電子簡易インボイスとして「利用証明書」が交付されます、利用者は「利用証明書」をダウンロードして保存する必要があります。  ただし、個々の高速道路利用の内容が分かるETCクレジットカードの「クレジットカード利用明細書」と、利用した高速道路会社等ごとに任意の1回利用分に係る「利用証明書」をダウンロードして保存することで、仕入税額控除が認められる弾力的な対応が国税庁から示されました。

Q

ETCクレジットカードの「利用証明書」はどのように保存しますか?

A

消費税の仕入税額控除を適用する観点では、「利用証明書」を出力した書面で保存するか、電子帳簿保存法に従い電子データのまま保存が必要です。電子帳簿保存法上は電子取引として、「利用証明書」を電子データのまま保存する必要があります。

Q

電子帳簿保存法の観点では、ETCの「利用証明書」は利用の都度毎回ダウンロードして電子データを保存する必要がありますか?

A

必要ありません。「利用明細書」をダウンロードした場合は電子取引データを受領したものとして保存要件を満たす形での保存義務の対象となりますが、ダウンロードしていなければ電子取引データを受領していないといえるため、あえて保存する必要はないといえます。  一方、ウェブ上で確認できる「クレジットカード利用明細書」の電子データについては、電子取引として保存必要があります。但し、別途書面が正本として送られてくるときは、正本のみを保存すればいいので電子保存は不要になります。

人事・労務、助成金等のご案内

「年収の壁・支援強化パッケージ」運用開始

厚生年金保険の第3号被保険者及び健康保険の被扶養者となっているパートやアルバイトの方などが、一定以上の収入(106万円または130万円)となった場合に、社会保険料の負担の発生や、企業の配偶者手当が支給されなくなること等による手取り収入の減少を避けるために就業調整を行う等のいわゆる「年収の壁」への対応として、「年収の壁・支援強化パッケージ」が実施されています。

※「年収の壁・支援強化パッケージ」の概要

〇キャリアアップ助成金・社会保険適用時処遇改善コース
令和7年度末までに労働者を社会保険に適用させ、賃上げか労働時間の延長によって労働者の手取り収入を増加させた事業主に対して1人あたり最大50万円を助成
〇社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
労働者の社会保険適用にあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給する手当が該当し、本人負担分の社会保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定除外となる
〇事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
一時的な収入変動である旨の事業主の証明により、年収130万円を超えても引き続き円滑に被扶養者認定する。

※キャリアアップ助成金

 キャリアップ助成金の社会保険適用時処遇改善コースには、新たに社会保険に適用されることで生じる保険料負担が労働者の手取り収入の減少につながらないよう、手当等により労働者の収入を増加させた事業主を助成するメニュー(手当等支給メニュー)と、労働時間の延長を組み合わせて収入を増加させた事業主を助成するメニュー(労働時間延長メニュー)が用意されており、両メニューの併用も可能になっている(併用メニュー

 キャリアアップ助成金を利用する場合、通常は対象コースの実施日の前日までに労働局にキャリアアップ計画書を提出する必要があるが、社会保険適用時処遇改善コースは令和5年10月1日に遡及適用されることから、令和6年1月31日までの間に手当等の支給等を就業規則に規定するなど取り組みを開始した場合は、計画書を令和6年1月31日までに事後提出することが認められる。また、事務負担軽減も図られている。

※社会保険適用促進手当

 「短時間労働者への社会保険の適用を促進するため、労働者が社会保険に加入するにあたり、事業主が労働者の保険料負担を軽減するために支給するもの」と規定され、「106万円の壁」への時限的な対応策として臨時かつ特例的に設けられた。社会保険適用促進手当を支給するにあたっては、就業規則等に規定した上で労働基準監督署への届出が必要になる。最大2年間の手当となるため、期間の終了後に手当の支給を取りやめる場合は、労働条件の不利益変更の問題が生じる可能性がある。あらかじめ一定期間に限り支給する旨を就業規則等で規定する対応が考えられるとしている。

※事業主の証明による被扶養者認定の円滑化

「130万の壁」への当面の対応策となる事業主の証明による被扶養者認定の円滑化に関して、人手不足による労働時間延長等に伴う一時的な収入変動である旨を事業主が証明することによって、年収130万を超えた労働者を引き続き円滑に被扶養者認定するための措置とされる。令和5年10月20日以降の被扶養者認定及び被扶養者の収入確認において適用され、それより前の被扶養者認定に遡及適用されることはない。

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